奈良時代から平安時代にかけて貴族に愛された、ブドウ科のツル性植物(ナツヅタなど)の樹液を煮詰めて作る古代の高級甘味料です。歴史と文献:『枕草子』で「けずり氷にあまづら入れて」とかき氷のシロップとして登場するのが有名です。特徴:砂糖が普及する前は水飴と並ぶ貴重な甘味でしたが、鎌倉時代以降に姿を消した「幻の甘味料」とされていました。味わい:口に含むと上品で強い甘みがありながらも、後に引かずにすっと消える爽やかな後味が特徴です。
甘葛(あまづら)風シロップ~古代甘味料・甘葛煎の味わい~
2023年 奈良あまづらせん再現プロジェクト
甘葛風シロップは、古代甘味料の甘葛煎の味わいを、その化学分析結果を元に開発したシロップです。主たる原料はショ糖とブドウ糖と果糖で、数種のミネラルと有機酸を加え、甘葛煎の爽やかな後味は柿渋(カキタンニン)をいれることで、ツタの樹液を使わずに作り出すことができました。
甘葛煎は、いまから1300年前の奈良時代には確実に食べられていた甘味料です。私たちは、ツタの樹液から甘葛煎餅を再現しています。その味わいは、甘さが後を引かない、後味がよい爽やかな味わいで、口に含んだあとスッと甘さが消えるのが特徴です。古代の人たちが味わっていたこの甘味を、全国の多くの人に味わってほしい。でも、ツタの樹液から再現するのは、人手とツタと場所が必要で大量生産は難しい。そこで、甘葛煎の精製法、古代の人たちの知恵、現在の他の甘味料にない味わいをこのシロップによって知っていただき、使っていただくことによって、古代の甘葛煎文化を多くの方々と共有し、次代へつなげていくことを望んでいます。
甘葛煎とは…砂糖が普通になかった時代の甘味です。
甘葛煎とは、冬季のナツヅタの樹液を煮詰めて作る甘味料です。平安時代の文学『枕草子』には「けずり氷にあまづら入れて」とかき氷のシロップとして登場しています。古代から使われてきましたが、砂糖の普及につれ姿を消します。この古代の甘味をよみがえらせようと「奈良女子大学甘葛煎再現プロジェクト」では、2011年からツタの樹液を採取して甘葛煎を再現する実験に取り組んできました。
《さらに詳しく、甘葛煎と原材料について…》
◆古代の甘味料の甘葛煎は、江戸時代に消失した幻の甘味です。
『枕草子』「あてなるもの」に日本最古のかき氷の記述があり、そのなかにでてきます。
削り氷にあまづらいれて新しき鋺(かなまり)にいれたる
初見は、奈良時代の長屋王邸跡(平城京左京三条二坊一・二・七・八坪)から出土した木簡です。
「甘葛」 平城京3277号木簡
古代には菓子に分類され、全国から税として都(平城京や平安京)へ納められました。
甘味料以外の用途に、練り香のつなぎ(薫物)、薬、贈答品などがあります。
◆甘葛煎の原材料について
諸説ありますが、字面からは、甘い葛(つる性植物)と考えられます。和語です。
本プロジェクトは、厳冬期のナツヅタの樹液が原材料だと考えており、それを煮詰めたものが甘葛煎だと考えます。1987年に日本で初めて甘葛煎をシロップ状に再現された故石橋顕氏から、製造方法を伝授されました。
<私たちがツタ(ナツヅタ)を原材料と考える理由>
ナツヅタは秋に紅葉し落葉します。気温が下がるほど樹液の糖度が高まります。本プロジェクトの再現実験で最も多く精製できた例では、2019年に、糖度21.5度の樹液1リットルが採れ、それを糖度70度まで煮詰めて190ccの甘葛煎が出来上がりました。
古代律令国家は甘葛煎を統一規格の税として全国(北は出羽国から南は薩摩国まで)に課していました。厳冬期のツタの樹液糖度が高い点、ツタは全国に分布しており、入手が容易である点。伐採してもすぐに再生する点から、全国からの貢納が可能であったと考えます。
甘葛事始アマヅラコトハジメホームページ
※この甘葛風シロップは、今後も改良される余地があります。これで完成ではありません。
《奈良あまづらせん再現プロジェクトについて》
古代の奈良に花開いた甘葛煎文化を復興し、現代奈良に活かすことを目的として、奈良女子大学甘葛煎再現プロジェクトと奈良市内の神社や飲食店関係者が協働し、2019年から甘葛煎の再現と味の発信にチャレンジしています。2020年頃からその味わいを作り出そうと考え、翌2021年から奈良県農業研究開発センターの協力を得て本格的に味覚の分析と開発に乗り出しました。
<甘葛煎再現プロジェクトの軌跡>
2011年1月13日 奈良女子大学で石橋顕氏を招き再現実験を実施。
2016年1月 奈良女子大学甘葛煎再現プロジェクト開始、樹液採取に遠心力法採用。
2017年2月 奈良市鶴舞小学校5年生総合学習郷土なら「幻の甘味料甘葛煎」始まる。
2018年2月 福岡市鴻臚館跡で再現、樹液採取法をあまづらブンブンと命名される。鶴舞小学校で再現。
2019年1月 奈良市内で再現。奈良あまづらせん再現プロジェクト開始。
2019年2月 鶴舞小学校で再現
2019年5月 岩手県平泉町で甘葛煎を使った平安薫物「荷葉(かよう)」を再現。
2020年1月 奈良市内で再現。
2020年2月 岩手県平泉町で甘葛煎再現、平安薫物「梅花(ばいか)」を再現。
奈良市内で再現した甘葛煎を長屋王邸に奉納。奈良氷室神社に奉納。
2021年2月 鶴舞小学校内のツタを使って甘葛煎を再現。
2021年12月 東京で再現、平安薫物再現
2022年2月 宮城県多賀城市多賀城跡で再現。
2022年3月 島根県松江市で再現。
2023年2月 奈良市内でツタの樹液を使った平安時代の高級デザート・芋粥を再現。
2023年7月 甘葛煎の味を人工的に作り出すことに成功し、お披露目。
2023年10月 「甘葛シロップ」として販売開始
2024年12月 商品名を「甘葛風シロップ」に変更
【奈良女子大学甘葛煎再現プロジェクト 前川佳代 記】
甘葛シロップゼリー

コラーゲンゼリーに甘葛風シロップをかけ、ミントを添えています。
自然な甘さをシンプルに味わいます。